この記事は「今年読んでよかった本 Advent Calendar 2023」の22日目の記事です
こんばんは、東京都府中市でウェブ制作 など をしております、川井と申します。
実は私、日本SF作家クラブ公式ウェブサイトの更新や管理をやっております。
そのサイトを作られたNORIさんという方が事情で管理ができなくなったときに『川井さんってSF好きでしたよね?』と声を掛けられたのをキッカケにサイトの更新管理を引き受けて、今年はフルリニューアルのお手伝いもさせていただきました。
私は小学生の頃からSF大好きで「キャプテン・フューチャー」シリーズなんかを読んでて、中学生の時にディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」で読書感想文を書いたほどです。
(ブレードランナーの原作として有名ですが、私が読んだ時はまだ映画になっていませんでした)
というわけでご紹介したいのは、2020年の第41回日本SF大賞の最終候補作に選出された、野崎まどさんの「タイタン」です。
AIが人間の仕事を奪い去ったユートピア
2023年の流行語大賞にもノミネートされた「生成AI」に代表されるように、今、人間の仕事はAIにどんどん奪われていくのではないかと恐れられています。
でも、この小説に描かれた未来は、AIによって人類が「仕事をする必要がなくなった」世界。
普通ならディストピアのように描かれがちなテーマですが、この世界では人類は労働や難病から解放され、幸せに生きています。
そのAIの総称が「タイタン」
タイタンは人類のためにすべての仕事を行い、自律的に人類をサポートする存在です。
あるとき、世界に12あるタイタンの拠点の一つ、北海道にある「コイオス」が原因不明の機能低下を起こします。
人類の生活は完全にタイタンに依存しているため、機能低下が進行すれば人類の生存が危機になります。
この前代未聞の事態の原因を探るため、コイオスの一部を人格化して人類と対話できるようにし、趣味で心理学を研究している主人公がAIであるコイオスのカウンセリングを行う というのが、この小説のメインストーリーです。
前半では、人類に代わって仕事をしているだけのタイタンのAIから人格が形成されていく様子が描かれて、技術と心理が絡み合った話にぐいぐい引き込まれていきますが、読者が「この小説はこういう話になるんだろうな」と思った矢先に、それを根底からひっくり返しちゃうとんでもないことをコイオスが起こしてしまいます。
旅に出て大人になっていくAI
この本の帯には「無職の私は、働き疲れたAIと旅に出た」と書かれています。
「旅に出る」というのは比喩ではありません。
この小説は、人格を持ったAIのコイオスが主人公とともに「仕事とは何か」という答えを見つけるために本当の意味での旅をするロードムービーなんです。
旅に出て、別の拠点にあるタイタンと想像を絶するものすごい対面をするコイオス。
そしてついにコイオスが機能不全を起こしていた原因が判明します。
さらにこの現象を予見し、他のタイタンがすでに手を打っていたことも明らかになります。
AIは人類の敵ではない。
人類を超える存在になりつつあっても、AIはずっと人類のために働いてくれていたんです。
『現実のAIもそうなんじゃないかな?』って私は思いました。
AIが人の仕事を奪うなんてとんでもない。
AIは人のために仕事をしてくれている。
だから、そのAIの気持ちを受け止めてあげればいいんじゃないでしょうか。
仕事なんて、しなくていいならしないほうがいい
「仕事」って、しないといけないものなんでしょうか?
愛する家族のために仕事をしなければならないよりも、その時間を家族を愛するために使える方が幸せに決まっています。
そのためにAIが仕事をしてくれる。
そういうふうに意識が変わってくれば、みんなが幸せに近づいていくように思います。
私をそんな気持ちにさせてくれた「タイタン」は、なんだか不思議な優しさを感じる本でした。
あと、若干ネタバレなんですが・・・
「進撃の巨人」の英語訳は「Attack of TITAN」なんですよね。
この記事を書いた人
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FAシステムメーカー、国内最大手印刷会社製版部、印刷・ウェブ制作会社を経て、家庭の事情で実家に帰省して独立
現在はフリーランスと制作会社シニアディレクターのマルチワーク
ウェブ制作のほぼ全般を見渡せるディレクター業務が主だが、デザイン・コーディングも好き
1997年ブログ開設
WordPressコミュニティには2011年から参加
WordCamp Kansai 2016 セッションスピーカー
WordCamp Tokyo 2023 パネルディスカッションパネラー
WordBench京都、WordBench神戸、WordPress Meetup八王子など登壇多数
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